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さて、かれこれ、もう20年近く前のことですが、いまでも印象に残っている言葉があります。
わたしが21歳の時のこと、当時わたしは、毎週日曜日の役者養成所、通称「日曜塾」にかよって、お芝居の勉強をしておりました。まだ入って、2、3カ月でした。稽古が終わって、師匠と弟子たちとで、飲みに行きました。それは毎度のことで、今でいう飲み二ケーションと言うところでしょうか。
それで、みなさん、まずビールとかを頼むわけですが、わたし、20を越えていましたが、お酒は飲まない主義でした(たいした意味はありませんが)。それで、「ウーロン茶」って店員さんに言ったのですね、
そしたら、師匠が、「お前は酒飲めねえのか?」ときいてきたので、わたし、「ぼくは、変な奴でして、お酒は飲まない主義なのです」と言ったのです。
そうしたら、師匠に言われたのです。
「おまえ、自分のことを変な奴、なんて言うのは、おかしいんだよ、人間はみんな一緒なんだよ!」
と言われてしまいました。そこで、わたしはっとさせられたというか、ああそうなのかとおもうところがありまして、いまだに、その言葉をよく覚えているのです。
確かに自分のことを変なんていうのは、おかしな話と言うか、むしろ自分こそ、評価の基準であるわけだから、他の人を、自分と比べて変だ、というのはあるけど、自分で自分のことを変と言うのはおかしなことだなあ、と合点がいったのです。それ以降、自分で自分のことを変などといわないように気をつけています。でもこの言葉、それ以上に、深い意味があるようにおもわれます。
それから師匠は、こんなことも言っていたっけ、
「人生にいいもわるいもない」
それらの演劇の師匠の言葉は、若いわたしにはとても印象的であり、衝撃的であったようにおもいます。みなさんはどのように感じたでしょうか?あるいは何にも感じなかったかな。
この「人間はみんな一緒だ」事件には、後日談があります。
その言葉を聞いてから、おそらく10年後位だったとおもいますが、そう、わたしが30歳位のときです。わたしは、そのときもずっと師匠に師事をして、公演のお手伝いをさせていただいていました。当時もう10年来の付き合いでした。
そんなある日の飲み会で、今度は師匠が次のようにわたしに聞いてきたのです、
「しもむら、おまえは、自分が変人だっていうことを自分でわかってるのか?」
そこでわたしは、間髪いれずに、こう返しました、
「師匠、人間はみんな一緒です」。